ブルゴーニュ出身の醸造家ニコラ・ダブディック
ブルゴーニュ出身のニコラは、ボージョレで醸造を学んだ後、ヴォーヌ・ロマネのコンフュロン・コトティドで2年間修業しました。1996年からはボルドーのジェルマン家が所有する300haもの畑を担当。その畑は200haがボルドー地方、100haがロワール地方に広がり、ボルドーではシャトー・ヨン・フィジャックを含むサン・テミリオンからブライまで、ロワールではソミュール・シャンピニィのティエリー・ジェルマン、ボンヌゾーのシャトー・ド・フェル(Chateau de FESLES)でテクニカルディレクターを務めました。 2005年に独立してからは、同シャトーを含む20軒以上のシャトーで醸造コンサルタントとして活躍。2009年にカノン・フロンサックのシャトー・ラリヴォーを引き継ぎ、2012年からはコンサルタント業を辞め、ラリヴォーのワイン造りに専念しています。
シャトー・ラリヴォーについて
ACカノン・フロンサックのサン・ミッシェル・ド・フロンサック村にあるシャトー・ラリヴォーは、1650年にマルタ騎士団によって建てられた、フロンサックでも特に歴史のある建物の一つです。フロンサックとカノン・フロンサックは、かつてフランス王侯貴族の食卓を飾った名高いエリアであり、リシュリュー枢機卿もこの地のワインを愛したことで知られています。
ニコラがシャトー・ラリヴォーを引き継いだのは2009年のこと。前オーナーが定年引退するも後継者がいなかった中、ニコラはその畑に一目惚れし、「他に類を見ない土地だ」と感じてこのシャトーを受け継ぐことを決意しました。当初6haだった畑は、その後ACボルドーにも畑を購入し、栽培面積は14haにまで広がっています。
カノン・フロンサックの多彩なテロワール
ボルドーの右岸、サン・テミリオンやポムロールから北西へ約5kmにあるフロンサックは、ドルドーニュ川とイル川に挟まれた三角形のワイン産地です。フロンサックは7つの村で構成されていますが、AOCは「フロンサック」と「カノン・フロンサック」の2つのみです。
カノン・フロンサック は約300ha という非常に小さなエリアです。“カノン”は古いフランス語でCoteau (丘陵地帯)を意味し、アペラシオンの全てが丘の斜面にあります。一方、AOCフロンサックは斜面と平地を含み800haほどの面積を有しています。
●区画ごとの特徴を最大限に引き出すブドウ栽培とワイン造り
シャトー・ラリヴォーの所有畑は、区画ごとに細やかに栽培管理されています。ニコラは、それぞれのテロワールを深く意識し、その特性が最も際立つキュヴェを造り出しています。ワインメーカーとしての豊富な経験を活かし、ドメーヌのブドウ栽培において、ブルゴーニュのような区画ごとの考え方を積極的に取り入れています。このアプローチは、畑の各区画が持つ個性とポテンシャルを最大限に引き出すことを目的としています。
「2009年に引き継いだ時、畑にはメルロのみが植えられてました。そのため、テロワールごとにワインを造りたいという強い想いがありました。いわゆるボルドーのファーストワイン、セカンドワインというイメージは私にはなく、あくまでもテロワールを重視しています 。」とニコラは語っていました。
<多彩なテロワール>
@台地(丘の頂上部):鉄分を多く含む赤色粘土石灰質
→風が強く比較的冷涼な気候が、フレッシュさと力強さをもたらす区画
ラシーヌ・ド・ラリヴォー(ピノノワール)、オー・クール・ド・ラリヴォー(メルロ)
A南東向きの斜面:粘土石灰質
→日照時間が長く温暖な気候が、凝縮感とエレガンスを与える区画
シャトー・ラリヴォー(メルロ)、ル・ブーケ・ド・ラリヴォー(カベルネフラン)
B丘の麓:粘土砂質
→軽やかさとフレッシュさをもたらす区画
ル・プチ・カノン・ド・ラリヴォー(メルロ)
C 700〜800m離れた斜面下部:非常に石灰分の多い白色粘土石灰質土壌
→フレッシュさを与え、シャルドネに適した区画
ラ・フルール・ド・ラリヴォー(シャルドネ)
単一品種へのこだわり
ボルドーではブレンドが伝統的な手法ですが、ニコラは当初から単一品種にこだわったワイン造りを行っています。
メルロのキュヴェを4つ、そして少量ながらピノノワール、シャルドネやカベルネフランにも挑戦し、いずれも単一品種のワインに仕上げています。これらは1〜2樽分しか生産されない貴重なワインになっています。
作柄にかかわらず、誰でも良いワインが出来るヴィンテージもあれば、丁寧な造り手でなければ良いワインが出来ないヴィンテージもあります。年産4〜5万本と決して多くはない生産量ながら、それでもニコラは、各ヴィンテージの特徴を表現しつつ、毎年例外なく時間をかけて丁寧に質の高いワインを仕上げています。
ニコラは自然の恵みを大事にするために、除草剤や化学肥料などを使わず、有機栽培を実践しています。
2023年より所有するすべての畑でオーガニック認証を取得 しています。
醸造について
白ワインについては、ブドウは手摘みで収穫して、全房のまま果梗も使って圧搾します。
白ワインの圧搾時に果梗を使うのは、プレス時のフィルターの役割を果たし、果汁をクリアでエレガントなものにするためです。
赤ワインのオー・クール・ド・ラリヴォーに関しては全房(2016年は50%)、ラシーヌ・ド・ラリヴォーも100%全房を使用しています。その他のキュヴェについては、その都度判断しています。
赤ワインは、果実と果梗を共にマセラシオンを行うことで、ワインにしっかりとしたストラクチャーを与えます。 これは、ニコラがヴォーヌ・ロマネで学んだ手法を実践したものです。
ワインはすべて天然酵母で発酵させています。
赤ワインは2〜8日間かけて低温(6〜10℃)で長めの発酵前浸漬を行い、手を加えることなく多くのアントシアニンと繊細なアロマを抽出します。 低温浸漬後、比較的低い温度(26〜30度)で8〜10日間のアルコール発酵を行います。濃厚なワインを目指すのではなく、果実感とフレッシュさを重視しているため、ルモンタージュは控えめに行います。 基本的に、抽出は発酵前浸漬で十分であるという考えのもと、発酵中はあまり手を加えません。軽やかさと果実味が特徴のル・プチ・カノンについては、ピジャージュさえ行いません。ラシーヌ、ブーケ、オー・クールについては、茎からのネガティブな雑味や苦味を避けるため、ニコラ自らが足でゆっくりと丁寧にピジャージュを行います 。
気温が上昇する春には、自然にマロラクティック発酵が始まります。樽香をつけないよう、400〜600Lの大樽(新樽は不使用)を使用し、酸化を防ぐために澱引きを行わず、シュールリーで熟成させます。
また、SO2の使用は必要最低限に抑えています。
ワインにストラクチャー、熟成ポテンシャルとフィネスを与えるために、長く熟成させるのも、ニコラのワイン造りの特徴の一つ です。最適な状態でボトリングを行うため、トップキュヴェは3年間以上がかかる事もあります。樽での長期熟成は、コストもかかりますが、何よりも経験、知識、技術、そして根気が必要です。