ワイナリー訪問記
〜地中海の風薫る南仏〜 ローヌ・ラングドック

見出し

初めての海外研修に胸躍らせてフランスに向かった弊社女性スタッフKとN。
そして、実直な人柄でお得意先からも大きな信頼を寄せられている中堅営業マンTの3人が、一週間にわたって南フランスのワイナリーを訪問してきました。

彼らが、実際に肌で風や気候を感じ、自身の目で見て畑の土を触ってその地の匂いを嗅ぎ取り、生産者と会話する− そんなリアルな体験を通して綴った訪問記を、前半のローヌ地方と後半のラングドック地方の2回に渡ってダイジェストでお伝えいたします。
ラングドック編 はこちらからご覧いただけます

ローヌ地方の訪問ワイナリー

@マレノン(リュベロン)

Aペスキエ(ヴァントゥ)

Bサン コム(ジゴンダス)

Cモンフォーコン(リラック)

Dムルグ デュ グレ(コスティエール・ド・ニーム)

ローヌ地図 

MARRENON/マレノン

研修1日目の訪問先は、マレノン社です。
マレノン社は、リュベロン国定公園内に1965年に設立され、「共同と団結」の精神を掲げ、高品質・低コストを実現してきた生産者協同組合です。
現在、リュベロンとヴァントゥに4,200haの畑を所有、約650人の生産者を擁しています。


<圧巻のスケール リュベロン公園とマレノン>

マレノン社のあるリュベロン公園内には観光地としても有名な村がたくさんあります。 「オークル」という赤土を使って家を建てている為、村全体が赤味を帯びているルシヨン村や、「フランスの最も美しい村」にも認定されたまるで宙に浮いているかのような絶景を見ることができるゴルド村などがあります。
ルシヨン村
ゴルド村
ルシヨン村
ゴルド村

リュベロン公園の広さはなんと14万ha!大阪市6〜7つ分の大きさです。
この広さではブドウが傷んでしまうため、マレノンではこの公園内に7つのワイナリーを所有しており、ワイナリーごとにワインを醸造しています。
車で公園内を走ると、たくさんのブドウ畑、チェリー、オリーブの木を見ることができます。
そのブドウ畑の80%がマレノンのもの!
ACリュベロンの約60%、ACヴァントゥの約20%を生産していることも納得の広さです。ただし、マレノンブランドとして販売するものは全体のわずか40%、残りはネゴシアン用に販売するという徹底ぶりです。

醸造所内を見学させてもらうと、ボトリングしているワイン全てがロゼ、BIBまでもロゼ。聞けば生産の50%がロゼとのことでした。この20年でフランス国内のロゼ消費は一気に増え、今や全体の30%を占めるほど。
フランスでは文化のひとつとしてロゼは根付いているのです。

マレノンのロゼはフレッシュで飲みやすいものが多く、皆様にも是非飲んでいただきたいです!
ボトリング1 ボトリング2 ボトリング3
ロゼワインのボトリング
 

ただただ規模の大きさを実感させられるワイナリー、マレノン。
綺麗な自然に囲まれた、笑顔が素敵なスタッフばかりのワイナリーでした。
ちなみに最新ヴィンテージの2018年は、5・6月は雨が多かったですが、夏はすごく暑く例年より暖かい年のようです。(K)

シラーの畑
古木グルナッシュ
グルナッシュの畑
シラーの畑
古木 グルナッシュ
グルナッシュの畑

<東西南北に広がるリュベロンエリア>

リュベロンは、デュランス川の北側、東西60km、南北40kmの広大なエリアで、川の南側はACプロヴァンスエリアです。
リュベロンには、真ん中にある標高1000mのリュベロン山を挟んで、南北にワイン産地があります。

北には2000mのヴァントゥ山がそびえ、乾いた冷たい風が吹きおろします。逆に、南では地中海から暖かく湿った風が吹くため気候が異なります。また、北側は粘土石灰質土壌、南側は石灰岩土壌となるため、ワインの味わいにも違いが出ます。

北リュべロンのワインにはフレッシュなアロマとミネラル感が(V254ヴェルサン・ノール)、南リュベロンのワインには暖かく豊かな果実味があります(V595ヴェルサン・シュド)。

マレノンのワインで、この産地の味わいの違いも是非お楽しみ下さい。


リュベロンのテロワール

CHATEAU PESQUIE/シャトー ペスキエ

2日目の朝に訪問したのは、「プロヴァンスの巨人」といわれるヴァントゥ山麓に本拠地を置く、シャトー ペスキエです。
今やヴァントゥでリーダー的存在のシャトー ペスキエは、ヴァントゥ山の南側斜面に100haの畑を所有し、恵まれた地理的条件と充実した施設から、ローヌ地方の典型的なブドウ品種を用いて滑らかで上品な味わいのワインを造っています。
オーナーは元理学療法士のポール・ショディエールで、2003年から二人の息子が近代的な美しいシャトーを引き継いでいます。
晴れ渡る空に心地よい風がお出迎え。
今回対応いただいたのは、マーケティングを担当している長男のフレデリックさんと当社へぺスキエのワインを日本に紹介してくれているアルノーさんです。

ヴァントゥエリアは標高が高く、250〜400mほどのところにあります。2000m級のヴァントゥ山は山頂が石灰質のため常に白く、その見た目から“Petit Mt.Fuji”と彼らが表現する山で、アルプス山脈の一つです。
ここから吹き降ろす冷たい風がヴァントゥとボークリューズ台地の間にとどまって涼しさをキープし、独特のテロワールの形成に大きな役割を果たしています。

南ローヌでも特に収穫の遅いエリアで、以前はその涼しさゆえにブドウの熟度が上がりづらかったそうですが、今は温暖化の影響で30年前と比べて2週間収穫が早まり、酸をキープしつつ完熟したブドウを収穫できるようになりました。

フレデリックさんはこの温暖化の影響についても将来を見据え研究に余念がないようです。
(完熟までにより暑さを求めるムールヴェードルや、酸度が高く色素が薄いサンソーに可能性があるとの話がありました。)

ヴァントゥ

自社畑は全部で100ha。10数年前からスタートしたオーガニック栽培はようやく100%転換が終了し、2018年にエコセール認証取得。2015年の収穫後から実験的にスタートしたビオディナミも着実に進んでおり、認証も取得予定との事です。ゆくゆくはすべてビオディナミへの転換を目指すようです。
ワインの試飲では、「白とロゼはマロラクティック発酵はしていない」という話があり、「酸を意識したワイン造り」が理解できます。
また今回の訪問で新たなラインナップとして新トップキュベの“アサンシオ”、アルテミアと同クラスの“シリカ”を加えてよりテロワールの個性を打ち出していくとの話でした。アサンシオは、インキーで粘性の強い果実感。シリカは砂質土壌にこだわった逸品で濃厚ながらジューシーで飲みやすさもあります。(今秋入荷予定)

新たなラインナップも加わり、更にパワーアップしたシャトー ペスキエのワイン、今後更なる可能性を秘めたヴァントゥのワインにぜひご注目ください!(T)
 
ペスキエワイン フレディックさん ブドウ畑
左からアサンシオ、シリカ、取扱中のアルテミア
フレディックさん
土がふかふかなビオロジックのブドウ畑
 

SAINT COSME/サン コム

2軒目の訪問先は、500年の歴史を有するシャトー ド サン コムです。
サン コムの15代目当主ルイ・バリュオールは、天才的なワイン造りで全世界にその名を轟かせ、ジゴンダスのスーパースターとしてだけでなく、今ではローヌを代表する生産者となっています。

ヴァンドフランスながら常に高評価を受け続けている不動の人気商品“リトルジェームス・バスケットプレス”や、アメリカのニューヨーク州で友人達と立ち上げたワイナリー“フォージ・セラーズ”など、精力的にワイン造りの新たな挑戦を続けています。

<畑の見学とダンテル>

ワイナリーのシンボルとなっている中世の教会跡、サンコム教会の横にビオディナミを実践している畑があります。除草剤も殺虫剤ももちろん不使用。一面に野草が生い茂っており、歩くたびに虫たちが飛び跳ねる健康的な畑は、耕したばかりでとてもフカフカです。

奥に見える、ジゴンダスの丘の上にある尖った山は、大昔に地層変化の影響で隆起した「ダンテル」Dentelle de Montmirail。かつては横向きだった石灰岩の層が地震により隆起し、縦向きの層になったことで、多様なミクロクリマが誕生したそうです。
ビオの畑

<サンコムワインのポテンシャル>

息の詰まりそうなカビ臭いセラーからは、500年の時を感じます。天井は赤い染みに覆われており「ワインでも溢したのですか。」という私の質問に醸造長が笑いながら、「カビですよ」と答えてくれました。壁はじっとりと湿り、湧き出た地中の水がワインにとって素晴らしい環境を維持していました。

そして、サンコムの偉大な歴史を感じながらのテイスティングです。毎年セパージュの変わるリトルジェームズ・バスケットプレス・ホワイト(V460)は、非常にアロマティックでそのコストパフォーマンスの高さに驚かされます。バスケットプレス・レッド(V260)は赤い果実がいきいきと感じられる一方で、“ソレラシステム”により継ぎ足された過去のブドウからくる複雑さ、そしてまろやかさも感じられます。お馴染みの2アイテムですが、改めてこうして試飲を行い、色々な顔を見せてくれるリトルジェームズの面白さを再発見することができました。
そしてレ・ドゥー・アルビオン・ルージュ(V109)ブラン(V673)を試飲。ローヌらしい、しっかりとした果実味でありながら、非常にエレガントできれいな飲み口。

全房発酵で無濾過にこだわるサンコムワインはブドウの旨みをダイレクトに感じることが出来ます。あまり手を掛けすぎないようマセレーションは短く、ゆっくりと熟成を行って完成したワインのポテンシャルは非常に高く、これからの味わいの変化も楽しみです。(N)

 
サンコム教会
セラー
アルビオン
サンコム教会
歴史を感じるセラー
レ ドゥー アルビオン

MONTFAUCON/モンフォーコン

2日目最後の訪問先は、ローヌ川を挟んだヌフ・デュ・パプの対岸、リラックに位置するシャトー ド モンフォーコンです。

シャトー名のMONT=山、FAUCON=鷹が示すように、ローヌ川のほとりにそびえ立つまさに要塞のようなモンフォーコン城は、11世紀の建造物で、現オーナーは城主パンス伯爵の息子ロドルフです。彼はフランス国内やカルフォルニア大学デーヴィス校でワインを学び、1936年から途絶えていたシャトーでのワイン造りを見事に復活させました。畑を60haまでに拡大し、2015年からはACリラックの委員長を務めています。緻密できめ細かな優しいワイン造りは高く評価され、毎年数々の栄誉を受けています。
サンコムから車で30分走ると、モンフォーコンのシャトーが見えてきます。

笑顔で出迎えてくれたのはオーナーロドルフさん。畑で見つけたという大きいガレ(丸石)を持って満面の笑みです。
モンフォーコン城p
ロドルフさん 畑1 畑2
ロドルフさん
モンフォーコンの畑

畑は強い風が吹く小高い丘にあります。ガレがごろごろしていて、強い風の中ブドウの木が元気良く育っていました。畑でいきなり歌って踊り出すロドルフさん。楽しい畑です。

中を拝見したいとお願いして、ご自宅でもあるシャトーの敷地内に連れて行っていただきました。
ロドルフさんがユーモアたっぷりに「開けゴマ!」と言うと大きな門が開きます。
優しそうな奥様、かわいくて照れ屋なお子さんたちにもお会いすることができました。2人とも笑顔がルディさんにそっくりです。

モンフォーコンが造るワインは、日本人の味覚にあったワインが多いです。
ロドルフさんも、コートデュローヌ・ブラン(V244)には「スシ!」、レ・ガルデット(V421)には「ヤキトリ!」とおすすめされていました。是非一度、試して頂きたいペアリングです。(K)

お城
門
「開けゴマ!」の合図で開いた城門

<ACリラックへの挑戦>

シャトーヌフデュパプの対岸に位置するワイン産地「リラック」。
ACコートデュローヌ発祥の地でもあり(1737年にコートデュローヌの名称が誕生)、最も早く独立したクリュで1947年にAOC認定されました。
シャトーヌフデュパプで13品種のブレンドが認められていることは有名ですが、リラックではそれを上回るなんと18種類ものブレンドが認められているのです。
モンフォーコンの畑もそんなリラックにあり、ACリラックを名乗ることも出来ましたが、その知名度の低さからあえて昔はACコート デュ ローヌとして販売していたそうです。

ロドルフさんは2015年にACリラックの会長に就任すると、それを機に「リラック」の認知度向上に奮闘します。そんなリラック愛にあふれた彼は、品種ごとのエレガンスを絶妙なバランスで表現するまさに「ブレンドの魔術師」です。
 

CHATEAU MOURGUES DU GRES/シャトー ムルグ デュ グレ

3日目の最初の訪問先は、ローヌ渓谷最南端のワイン生産地AOCコスティエール・ド・ニームのワイナリー、シャトー ムルグ デュ グレです。

シャトー ムルグ デュ グレの現当主フランソワ・コラールは、醸造学を学んだのちシャトー ラフィット ロートシルトで修行を重ねたワイン造りの名手で、1990年、コスティエール・ド・ニームが新たにAOCに認定されたのを機に家族が運営するワインリーに戻ってきました。現在、ローヌ河沿岸に約60haの大変日当たりの良い畑を所有し、太陽の恩恵を十分に受けたテロワールから素晴らしいワインを造っています。

<自然の恵み“ガレ”>

オーナーご夫妻もエクスポートマネージャーのオリビエさんも非常に優しい方。
畑は60ha所有で生産量は40万本、思っていたより規模も大きく、高品質ながらリーズナブルな価格を実現している理由のひとつだと感じました。

コスティエール・ド・ニームの特徴は写真のガレ(丸石)です。プロヴァンスの言葉では「グレ」と言い、これがワイナリー名の「グレ」に当たります。実際に畑を見てみると5cmぐらいのものからこぶし大ぐらいの大きなものまで無数のガレで畑が覆われているようです。
この丸石は氷河期の頃、山から川を伝って転がってきて、その時間の中で丸くなった石とのこと。

ガレ(丸石)とムルグ デュ グレのワイン

ニームでは、この水はけの良い丸石の土壌と下層の粘土質のおかげで、年に数回ある大雨の際も水が溜まりすぎることはなく程よく貯えられるので、ブドウの根はその水分を求めて長く伸びています。

またガレは保温効果もあり土中の温度が高くなりますが、冷たい風(ミストラル)が吹くことで空気が循環し、ほどよく冷やされるとの話でした。非常にうまく出来た自然のシステムで、出来るべくして出来たワインなのだろうと思いました。

ニームのテロワール
ニームのテロワール

畑を歩くと所々ハーブやジュネ(日本語でエニシダと言われる黄色い花)、アーモンドの木などが目に留まります。聞くとブドウ畑だけと言う環境では害虫等の被害にあったときに対処できない。色んな草木があることでお互いを守りあい、また一つが駄目になっても他の草木が健全なことでそこの自然全体を守っていくという考えです。
環境も自然なまま置いておくことでブドウにとっても良い環境が維持されるとだと理解しました。
ジェネ ハーブ コラールご夫妻 グルナッシュ
ジェネ(エニシダ)
ハーブ
当主のコラールご夫妻
樹齢65年のグルナッシュ

<ガレから生まれるナチュラルなワイン>

ワインは100%オーガニックのナチュラルな味わいで、派手さはありませんがじんわりと口に広がっていく印象です。ご自宅でランチをご馳走になりましたが、すべて奥様の手作り!そのお料理とワインがしみじみと良く合います。アンショワイヤード(冷製バーニャカウダ)に野菜をディップしたものや地元のトマトには「レ・ガレ・ドレ・ブラン」、ナスのケーキパンには「レ・ガレ・ルージュ」、サラミやテリーヌには「テレ・ダルジョーンズ」が良く合います。ワインが主張し過ぎないからこそ料理に寄り添ってくれるイメージです。本来のワインの楽しみ方を改めて感じさせられました。

ラベルに描かれている“SOLE”と書かれた四角の紋章のようなものは“日時計”で、「太陽がなければ、何もない」という意味だそうです。「太陽の恵みがあるからこそ私たちはワインを造る事ができるのだ」というメッセージです。そんなオーナーご夫妻の人柄がにじみ出た素晴らしいワイン、一度お試し頂ければと思います。(T)
料理1
料理2 料理3 日時計
奥様お手製料理
ラベル記載の「日時計」

今回ご紹介したワイナリーの詳細は、こちらからご覧下さい。

MARRENON / マレノン

CHATEAU PESQUIE / シャトー ペスキエ

SAINT COSME / サン コム

MONTFAUCON / モンフォーコン

CHATEAU MOURGUES DU GRES / シャトー ムルグ デュ グレ



【次回記事】ワイナリー訪問記〜地中海の風薫る南仏〜 ラングドック編 へ続く

 

飯田