ボルドー右岸の注目ワインメーカー

Jerome Aguirre ジェローム・アギーレ

ジェローム・アギーレ  妻とともに運営するワイナリー  ワイン造り こだわりの小仕込み

〜ジェローム・アギーレの手掛けるワイン〜

シャトー・オー・ミュセ  シャトー・トゥール・サン・クリストフ  シャトー・ラ・パターシュ

ジェローム・アギーレ

ピレネー山脈の麓にあり、中世の面影が今も残るバスク地方の小さな村、サン・ジャン・ピエ・ド・ポル。
フランスで最も美しい村のひとつとされるこの地は、ボルドー右岸の注目のワインメーカー、ジェローム・アギーレの故郷です。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポルは、スペイン巡礼路のピレネー越えの出発地、フランス側の拠点として栄えた村で、一年を通して観光客で賑わっています。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポル
サン・ジャン・ピエ・ド・ポル
(参照:OFFICE DE TOURISME PAYS BASQUE)

現在、ボルドーで活躍する醸造家 ジェローム・アギーレはこの地で幼少期を過ごし、2002年には大学で自然科学の免状を取得、ボルドー大学の醸造学部にてオノログの資格を得て醸造家としてのキャリアをスタートします。

先ずは、地元サン・ジャン・ピエ・ド・ポルの近くのドメーヌ・ド・ブラナで数年間修業。ドメーヌ・ド・ブラナは、ACイルレギーを確立した名門で、かのシャトー・ペトリュスで44年間にわたって醸造責任者を務めたジャン=クロード・ベルエとも深い関係のあるワイナリーです。ジェロームは、このジャン=クロード・ベルエとのコラボレーションを経て、ボルドーAC最高の生産者と名高いシャトー・ド・レイニャックの醸造を4年間ほど担当しました。
ジェローム・アギーレ
ジェローム・アギーレ

その後、オーストラリアのバロッサ・ヴァレーでも見識を深め、ポムロールのペレ・ヴェルジェ社のシャトー復興に参画します。そして、シャトー・ル・ゲとシャトー・ヴィオレットで醸造を指揮するや、いきなりワインアドヴォケイトで96点、更に100点をたたき出す実力を発揮。その後、国際的にも高い評価を受け、ボルドーを代表するワインメーカーの一人になりました。

2012年からは、国際投資家ピーター・クォックのビッグプロジェクトにテクニカルディレクターとして参画、その手腕を大いに発揮します。
ピーター・クォックはボルドーワインをこよなく愛するベトナム出身の中国人投資家で、ワイン業界では1997年にアジア人として初めてボルドーの畑を購入したとして知られた人物。以降、20年以上に渡って7つのシャトーを購入し、ヴィニョーブルKを運営しています。

ジェロームは、2005年にプロジェクトに参画したコンサルタントのミッシェル・ロランとともに、埋もれていたシャトーの復興に尽力してきました。

ピーター・クォック
ピーター・クォック(左) と
ヴニョ-ブルKのスタッフ
(参照:Terre de Vins)


愛妻ヴェロニクとともに運営するワイナリー

一方で、ジェロームは、2005年から奥様のヴェロニク・アバディとラランド・ド・ポムロールの小さなワイナリー、シャトー・オー・ミュセを運営しています。
ヴェロニクとはジェロームがボルドー大学の醸造科に通っていた頃に出会い、その後一緒になりましたが、ヴェロニクはバスク人と歴史的に敵対する隣国のベアルン出身。それは、愛がおこした奇跡といえる結婚でした。

ヴェロニクの家系は羊飼いとチーズ農家で、移牧をしながら毎冬ボルドーまで来ており、ブドウ畑に羊を放牧して自然農法を実践していました。現在は、祖父母から譲り受けた畑を元にシャトー・オー・ミュセで薬剤師の仕事をしながらワインの醸造を担当しています。

この畑は、シャトー・アンジェリュスのオーナーでワインメーカーとしても著名なユベール・ド・ブゥアール・ド・ラフォレが所有する、ラ・フルール・ド・ブゥアールの畑の直ぐ隣というに好立地にあります。
ジェロームは、この素晴らしいテロワールの個性を最大限に表現するべく、トップシャトーと同様の丁寧な方法で、ヴェロニクと二人三脚でワイン造りを行っています。

ジェロームとヴェロニク
ジェロームとヴェロニク

ジェロームのワイン造り

ジェロームは生粋のバスク人。ヨーロッパで最も古い民族とも言われ、現代もなおその独自の文化や言語を守っている、誇り高きバスク人です。
働き者で生真面目、そして繊細なバスク人気質がワイン造りにも反映されています。

全てにおいて、「時間」をかけ長期的に考えることが重要とジェロームは言います。
まず、畑やブドウ、気候、そして環境を、それぞれじっくり時間をかけて理解しなければなりません。
収穫にも時間をかけ、1本1本区画ごとにタイミングを見て行います。「良いブドウがなければ、良いワインは出来ない。」からです。

醸造にも十分時間をかけ、それぞれの樽ごとにワインのポテンシャルを引き出します。醸造時間や熟成期間も、自然環境によって、年ごとに変えています。
「どのワインにも、味わいと個性が大切」と、プロットごとにSO2のバランスにも気を配りながらワイン造りを行います。

長年コンサルタントとして協働しているミッシェル・ロランからも、
「自然を大切に、1にも2にも<仕事>をすることが重要である」 と、ワインの品質に対して厳しく要求されるとのこと。
ワインアドヴォケイトで100点を獲った彼をしても、ワインを造るという仕事は100%自信を持てるものではないと言います。
試飲の際には自信を失うこともあるとも。

謙虚な姿勢を忘れず、日常の細部にこだわり、常にワイン造りと向き合うジェロームです。

ミッシェル・ロラン
ミッシェル・ロラン

マイクロヴィニフィケーション

マイクロヴィニフィケーションとは果粒を直接小さな樽(バリック)に入れて少量ずつ醸造していく手法(小仕込み)で、ジェロームは、ボルドーでいち早くワインの醸造にこのマイクロヴィニフィケーションの手法を取り入れた一人です。

ワインの醸造中は櫂入れを手作業で行い、発酵期間中も、果皮と果汁を触れさせエキスの抽出を促すため、昼夜絶やさず樽を数時間ごとに回転させます。


非常に手間はかかりますが、区画ごとに細かく醸造することで畑の個性を最大限に引き出すことが出来ます。

今ではこの技法を用いて多くのシャトーから高品質のワインが生まれています。

マイクロヴィニフィケーションの例
マイクロヴィニフィケーションの例

〜ジェローム・アギーレの手掛けるワイン〜

CHATEAU HAUT MUSSET  シャトー・オー・ミュセ

ジェロームと妻のヴェロニクが運営するワイナリーで、ポムロールのすぐ北に位置するラランド・ド・ポムロールにあります。
土壌は、ポムロールと同様に底土にクラス・ド・フェールと呼ばれる鉄分を含む石灰質土壌があり、表面は粘土砂質土壌と砂利質土壌の薄い層で覆われています。
この素晴らしいテロワールの純粋な個性を引き出すために、最新技術の小さなコンクリートタンクを備えた小さなワイナリーを設け、ワインの熟成にもトップの樽業者によるバリックを使用しています。

二人は、まるで我が子を慈しむように細心の注意を払い、ノウハウを駆使してフィネスとエレガンスに溢れたワインを造っています。
シャトー・オー・ミュセ
V2091
商品名
CHATEAU HAUT MUSSET
シャトー オー ミュセ
番号
V2091
クラス
ACラランド・ド・ポムロール
品種
メルロ80%カベルネフラン20%
4ha所有。砂利混じりの粘土質土壌
栽培
平均樹齢30年。植密度5,000本/ha。収量40hl/ha。芽かき、除葉、グリーンハーベストを行う。有機農法。年産約15,000本。
醸造
低温浸漬の後、天然酵母により3週間の発酵。50%をタンク、50%を樽で20ヶ月間の熟成。軽くろ過して瓶詰め。
コメント
ベリー系フルーツの甘みのある心地よい果実味に酸がとてもよく調和した、滑らかな口あたりも魅力の赤。
   

CHATEAU TOUR ST CHRISTOPHE シャトー トゥール サン クリストフ

サンテミリオンに位置するシャトーで、非常に歴史あり、ユニークなテラス状の段々畑が特徴です。
昔は「ブロンショ(白い石)」というリューディ名がついており、サンテミリオンではオーゾンヌとここだけだったという特別な場所でした。

リューディ名にもなったこの石灰岩には割れ目があり、ブドウ樹はそこから根を伸ばすことが出来ますが、水分が一部しか入らない為、適度な負荷がかかり、凝縮した実をつけることができます。
また、白い石灰岩とすり鉢状の土地の形状によって、太陽の熱がたまりやすく、他の畑に比べ2℃ほど気温が高くなることも非常にユニークな特徴です。

ジェロームは、ここは環境のバランスがよく、個人的に良いエネルギーを感じる畑といいます。
ミッシェル・ロランもこの地の素晴らしさに感銘を受け、2012年、ヴィニョーブルKにより大規模な畑のリニューアルがスタートしました。

昔のテラス状の段々畑を再現すべく、崩れた壁を昔ながらの方法で建て直し、継ぎ目にはセメントを使わずに高度な技術を持つ石工職人の手だけで一つ一つ作り上げていきました。

こうして2015年には畑とセラーが完成し、このシャトーの素晴らしいテロワールが表現できるようになりました。
V2887
商品名
CHATEAU TOUR ST CHRISTOPHE
シャトー トゥール サン クリストフ
番号
V2887
クラス
ACサン テミリオン特級
品種
メルロ85%・カベルネフラン15%
11ha所有。ACサンテミリオンでも、特に優れたテロワールのサン・クリストフ・デ・バルドに位置するテラス状の畑。標高85m。南〜南西向き。海洋性気候。粘土石灰質土壌。
栽培
平均樹齢40年。ギュイヨ仕立。収量35hl/ha。パーセルごとに管理。リュットレゾネ。選果をしながら手摘みで収穫。年産20,000本。
醸造
除梗後、再度念入りに選果を行う。約1/3はバリックでマイクロヴィニフィケーションを行う。残りはコンクリートタンクで6日間の低温浸漬後、12-30℃で35日間の発酵。バリックにてマロラクティック発酵と18ヶ月の熟成(新樽比率60%、残りは1〜2年の樽使用)。
コメント
樽発酵による濃密な果実味、まろやかでキメ細かいタンニンに長く深い余韻。軽やかに口内に広がるしなやかな味わいは品格があり、テロワールの素晴らしさを実感できる。
   

CHATEAU LA PATACHE シャトー ラ パターシュ

シャトー・ラ・パターシュはポムロールに昔からある小規模なワイナリーで、ヴィニョーブルKの管理のもとに運営されています。

エチケットの十字架があらわすのは、昔のキリスト教の分教のシンボルであり、ポムロールのシンボルです。ポムロールは、クラス・ド・フェールと呼ばれる特有の鉄の酸化物が多い粘質土壌があり、この酸化鉄がポリフェノールや熟成感に影響を与えるといわれています。ラ・パターシュでも、天候がよい年には黒い果実やトリュフの香りのする素晴らしいワインが出来ます。

ラ・パターシュでは9つの区画の畑のブドウを使用しており、近くにはシャトー・ペトリュスの畑もあります。良質な砂礫や細かい石灰の集積など様々に異なる複雑な土壌があるため、区画ごとに細かく管理を行い、環境に配慮した伝統的な栽培方法を行っています。

醸造も一部にマイクロヴィニフィケーションを用い区画ごとに細かく行っています。

シャトー・ラ・パターシュ
V2886
商品名
CHATEAU LA PATACHE
シャトー ラ パターシュ
番号

V2886

クラス
ACポムロール
品種
メルロ70%・カベルネフラン30%
2.5ha。海洋性気候。標高50m、南東向きの畑。青みがかった粘土砂利質土壌。
栽培
平均樹齢25年。ギュイヨ仕立。植密度7,000本/ha。収量35hl/ha。パーセルごとに管理。2010年は10月5日に手摘み収穫。リュットレゾネ。年産18,000本。
醸造
畑とセラーにて2度の選別。平均して収穫の25%ものブドウが取り除かれる。ステンレスと樽を使用して醸造。果皮浸漬後、16〜30℃で30日間の発酵。50%新樽で12ヶ月の熟成。無ろ過。
コメント
典型的なポムロールの上質ワイン。よく熟した細かいタンニンと豊かな果実味が樽香に調和。ふわっと舌にのるような柔らかなテクスチャーも魅力。
   
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