ワイナリー紹介・訪問記

ARNALDO CAPRAI
アルナルド カプライ

ワイナリー

〜ワイナリー紹介〜
ウンブリア州について 歴史 サグランティーノ種への挑戦 ヨーロッパ最優秀ワイナリー受賞

〜訪問記〜
醸造・熟成への想い 料理とのマリアージュ

ウンブリア州について

イタリア半島のほぼ中央、山岳地帯が半分以上を占める唯一海に面していない州、ウンブリア。
アペニン山脈の西側に広がる山と丘と湖が織成す“緑の心臓”と呼ばれている美しい州に、サグランティーノ種の復興の主役と呼ばれているワイナリー、アルナルド・カプライが位置しています。

州内をローマに通じる様々な交通路が巡り、聖サンフランチェスコ大聖堂のあるアッシージをはじめとして、ローマ時代や中世の建造物があちこちに残されています。州都ペルージャは古代エトルリアに始まる観光学術都市で、織物業と食品工業も盛んです。起伏に富んだ地形と河川が造る緑溢れる美しい風景は印象的で、トスカーナほどの知名度はありませんが、旅人を再度呼び寄せるような魅力のある地域です。

古代ローマ時代から州全域でブドウ栽培が盛んで、ローマ法王へワインを献上した歴史もあります。アルナルド・カプライの畑は内陸性気候で寒さ厳しい一方、夏は40度以上と大変暑くなります。
しかし近くにアペニン山脈があるため夜の気温は下がり、この昼夜の寒暖の差がワインの味わいに良い影響を与えてアロマと酸が保持されています。


ウンブリア

アルナルド カプライの歴史

ワイナリーのスタートは1971年、繊維業で成功を収めたアルナルド・カプライ氏が夢であったワイン造りを行うため、モンテファルコ村のヴァル・ディ・マッジョの畑を5ha取得しました 。

数種の品種が畑に混植されるのが普通だった時代に、サグランティーノ種のみを植えることはかなり革新的な事でした。
元来モンテファルコは葡萄栽培が盛んでしたが、フォリーニョ、テルニ等の重要な工業都市が近くにあり、第二次大戦後の高度成長期に若年労働力を多く必要としたため多くの若者が農業を捨て工場で働くようになり、農村は荒廃していました。
そんな状況の中個性が強烈でその上収穫量が少なく、第二次世界大戦以降あまり作られていなかった貴重な土着品種サグランティーノを復活させた事は、大きな賞賛に値しました。

畑

サグランティーノ種への挑戦

アルナルド カプライが飛躍的に発展したのは、1988年に、長男マルコ・カプライ氏がワイナリーに入社してからの事です。 若きマルコは、意欲的に改革に取り組みました。当時サグランティーノ種は、いくつかの生産者が細々と生産する程度でした。
中世に既にモンテファルコで栽培されていたと言われていますが、そのルーツは明確ではなくフランチェスコ派の修道士がポルトガルから持ち帰ったと言う説や、プルニウスの著書にあるイトゥリオーラ種が起源と言う説もあります。 モンテファルコのみで栽培されているこの土地独自の品種として、地域の教会で守られてきました。主に祝祭に使われたので、その名に「聖なる」を意味する“sagra”と言う言葉を含んでいると言われています。

1960年代までは絶滅が危惧されていたこの品種は、荒々しくて御することが困難なまるで暴れ馬のような野生的な個性を持っています。世界一ポリフェノール含有量の高い品種で、通常の赤ワインとして食事と共に楽しむのは困難と考えられ、陰干しして甘口タイプとして造られていました。しかしこの品種の驚くべき特徴に可能性を感じていたマルコは、世界に通用する高品質ワインにすべく3つの改革を掲げました。

<マルコ 3つの改革>

1つ目:求める品質のクローンを得る事

1989年にミラノ大学のレオナルド・ヴァレンティ教授を栽培コンサルタントとして招き、サグランティーノ種のクローン選抜(コーブラ、コッレピアーノ、25アンニの3クローンを選抜)に着手しました。


2つ目:ワイン造りに関わる全ての見直し

サグランティーノ種の様々な栽培方法の実験(ヘクタール当たりの植樹数、台木、仕立て法等による成果の比較)等を進め、コルドン仕立への変更、収量を落としフレンチオークを採用するなど改革を進めました。1990年には新進醸造家のアッティリオ・バーリ氏をコンサルタントとして招聘、伝統を重んじながらも現代的革新的な技術を取り入れ醸造を近代化、その結果が偉大なワインの誕生に結びつきました。


3つ目:DOCモンテファルコ・サグランティーノのDOCGへの昇格

モンテファルコ・サグランティーノは1979年にDOCに認定、その年がコッレピアーノの初ヴィンテージでした。その後1992年にDOCGに昇格しました。

改革と努力の積み重ねがもたらした、夢の実現です。マルコの尽力が認められカプライのワインが国際的に成功し、またこれが原動力となってサグランティーノ種が世界に知られるきっかけとなりました。



マルコ・カプライ
マルコ・カプライ氏
 
 
 
サグランティーノ
 

ヨーロッパ最優秀ワイナリー 受賞

DOCG昇格の翌年、1993年に創設25周年を記念したアイテム、モンテファルコ サグランティーノ25anniが産み出されました。(リリースは1996年)
破格の凝縮感を誇る風格ある味わいで、世界的な名声を得ました。

初ヴィンテージでいきなり、「ガンベロ・ロッソ」にて最高評価のトレ・ビッキエーリを獲得、その後も毎年連続してトレ・ビッキエーリを獲得しています。ワイナリーとしても、2001年にイタリアソムリエ協会から最高の造り手として、ワインのオスカー賞『Oscar del Vino』を獲得しました。

2006年版ガンベロ・ロッソ&スローフードのイタリアンワインガイドでは、ワイナリー オヴ ザ イヤーに選ばれ、ミスター サグランティーノとしてマルコの写真が月刊誌ガンベロ・ロッソの表紙を飾り、更に2012年には、ワインエンスージアストで『ヨーロッパ最優秀ワイナリー』を受賞しました。

アルナルド・カプライは、イタリアを代表するワイナリーの一つとしての地位を確かなものにしました。

ガンベロロッソ
ワインエンスージアスト
ガンベロ・ロッソの表紙
ワインエンスージアスト
『ヨーロッパ最優秀ワイナリー』を受賞

 


2018年6月、カプライを訪問して参りました。
その際うかがった、マルコの熱い想いやランチの様子を一部ご紹介いたします!

醸造・熟成への想い

現在、カプライの存在はサグランティーノ種を広めるためだけではなく、ウンブリア州やモンテファルコを発展させていく役割も担っています。サグランティーノ種のパイオニアであるだけでなく、常に挑戦を続けて進化しています。

醸造所を覗くと、他のワイナリーでは見ないような形状のステンレスタンクがあります。
高さ2m、直径3mの背丈の低い幅広なタンクが並んでいるのです。果帽と果汁の接触面積が広く、良質な抽出が可能な形状となっています。しっかりと抽出出来るが、フェノール類の成熟が完璧でなければ青いタンニンを大量に放出してしまうリスクがあるので、最良の葡萄を使う必要があるとマルコは語ります。

マセラシオンは以前は30日との事でしたが、現在は40日行っています。又、実験的に90日でのマセラシオンも試みています。商品になるかどうかは今は分からないとの事ですが、可能性を求めて進んでいく姿勢がストレートに伝わってきます。

サグランティーノ種はポリフェノール含有量が異常に多く大量の酸素を必要とするので、私にとって唯一可能な熟成容器はバリック!! と、マルコは熱く語ります。
引続き彼は、“ただでさえタンニンの多いサグランティーノ種にバリックのタンニンを加える事を恐れる生産者がいるが、それは間違い。成熟した良質なタンニンであれば、それがサグランティーノ種の特徴であるので恐れる必要は全くない。その過剰な個性を、最大限に魅力的なものにすれば良い。アントシアニンも多く果実味も豊かなので、高レベルでバランスが取れている。 タンニンを怖がって早く収穫する生産者もいるが、未熟なタンニンが残ってしまう。そのタンニンを大樽で長期熟成して和らげようとしても無理!”と、毒舌とも取れる勢いで豪語します。
しかしそれは、一貫した信念を持って歩んできた人に共通する純粋な思い、人間マルコ・カプライとしての魅力が伝わってくる言葉のように思えます。

現在136haの葡萄畑を所有、9割はサグランティーノ、サンジョヴェーゼ、グレケットと地元の品種を、残りの1割でメルロ、カベルネソーヴィニヨン、プチヴェルド、ピノノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ヴェルメンティーノ等を栽培しています。
又1995年からサスティナブルなワイン造りに取り組み、2010年に立ち上げられたエコ・プロジェクト、モンテファルコ2015『NEW GREEN REVOLUTION』に参加する等、環境に配慮したワイン造りを行っています。

タンク
高さ2m、直径3mの背丈の低い幅広な発酵タンク。
 
樽
 

料理とのマリアージュ

ワインビジネスで成功、サクセスストーリーを実現させたようなマルコですが、訪問の際のランチはリストランテではなく畑の中の素朴な食事でした。

近隣で取れた野菜や肉を使った、まさしく地元の味わいを畑の中でゆったり風に吹かれて頂くと、マルコの真意がさり気なく伝わってきます。お料理にもワインにも、どこか同じトーンを感じます。

この土地の味わいがまさしく彼の原点と、身をもって知る事が出来ました。



lunch

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・羊や鳩の炭火焼
・ラザニア



濃厚な果実味に力強いタンニン、しかし酸味にみずみずしさがあり調和のとれた滑らかさのあるサグランティーノには、地元で取れた羊や鳩の炭火焼がお勧めとの事でした。厚みある深い味わいとオイリーな舌触り、とにかく滑らかな印象が心に残ります。ラザニアとも美味な組合せでした。
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・サラミや生ハム
・パスタ


サンジョヴェーゼメインで、15%ずつメルロとサグランティーノをブレンドしたモンテファルコ ロッソには、サラミや生ハム、パスタを勧められました。
このワインは一時期はサグランティーノの影に隠れた存在と言われていましたが、独自のスパイシーさと力強さを持った味わいで、伝統的な料理にマッチする赤ワインとして注目されています
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・トマト

・プティオニオン

・ズッキーニ

香り高く白桃を連想させる優しい辛口、グレカンテ グレケットは素材の味わいを生かす繊細なタイプです。トマトにプティオニオン、ズッキーニ等、同じ地域で作られた野菜との相性は言うまでもなくナチュラルにマッチします。
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<プチ情報>

サグランティーノ種への熱い想いを語ったマルコが、食卓につくやいなやかぶりついたのは、トルタ アル テスト
テストと言う鋳鉄板で焼いたウンブリア名物の、生ハムを挟んだ平焼きパンです。

子供の頃、家に帰ってコロッケをパクリと食べた事を思い出すような光景でした。きっと彼にとっては、小さい頃から慣れ親しんだ味わいなのでしょう。


トルタアルテスト
   
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緑の丘に囲まれたワイナリー、アルナルド・カプライはこれからも、サグランティーノの研究を余念なく続けていきます。完璧を求めている姿に、人間性が溢れます。進化していく姿を注目していたいと思います。


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